第 3471 回

太陽光発電所の売却と購入(セカンダリー取引)に係わる実務、契約書、法的注意点

~過積載の規制を受けて~

会場受講
2017年11月30日(木) 13:30~16:30
金融ファクシミリ新聞社
セミナールーム
東京都中央区日本橋小網町9-9
小網町安田ビル2階 地図
電話 03-3639-8858
当セミナーは全 回のシリーズ開催です。
1回のみでもお申込みいただけます。

講師

江口 直明
ベーカー&マッケンジー法律事務所
パートナー弁護士

講演趣旨

 改正再エネ法が2017年4月1日から施行され、経産省の推計によると27GWの太陽光発電の設備認定が2017年3月末で失効した。しかし逆に見れば、23GWは3月末を乗り切ったことになる。太陽光発電の買取価格は2MW以上は入札となり、上限価格は2MW未満と同じ21円である。新規太陽光発電の開発は、工事費が高止まりしていて益々難しい。さらに過積載の規制が追い打ちをかけた。これは、既存の太陽光発電所の希少性が高まり価値が上がることだ。今後は生き残った23GW分の設備認定の太陽光発電所の開発と売電を開始した太陽光発電所のセカンダリーセールスが焦点となる。
 丸紅が建設した太陽光発電所を400億円で日本政策投資銀行に売却し、200億円の売却益を得たことが報道されている。海外ファンドも日本に上陸し、太陽光発電所を買い始めている。また、東京証券取引所の太陽光発電所等の再生可能エネルギー向けインフラリート投資法人もタカラレーベンインフラ投資法人が2016年6月2日に東証に上場し、2016年12月1日には、いちごグリーンインフラ投資法人が東証に上場した。さらに2017年3月29日にはリニューアブル・ジャパンの子会社のRJインベストメントが運用を手掛ける日本再生可能エネルギーインフラ投資法人が東証に上場した。
 日系の開発者の中には、当初の予定を変更して、完成した発電所をまとめて売りに出す動きが出てきた。また、海外投資家は完成後は売却することを前提に開発を進めている。これらの海外投資家の太陽光発電所のファイナンスが1年前から活発化しているので、海外投資家が完成した太陽光発電所を売りに出すケースが出てきた。10以上の太陽光発電所をまとめて売りに出すバルクセールの入札も活発化している。
 さらに電力小売自由化を勝ち抜くためにPPSによる電源獲得競争が始まっている。リコーが日本企業としては初めてRE100に参加したという記事が報道された。アメリカで始まっているCorporate PPA(電力多消費のサーバーを持つGoogleやAmazonなどが再エネ電源から直接100MW~200MW規模で電気を長期調達する動き)が日本に上陸するのも時間の問題である。他方、自然災害の脅威は高まり、設計・建設に瑕疵のある太陽光発電所を購入してしまった場合には思わぬ損害賠償請求を受けるリスクも高まってきた。技術的なデューディリジェンス及び購入後に売主に責任を追及できる売買契約書が重要になる。
 本セミナーでは完成した太陽光発電所の売買・M&Aについて注意すべき法的問題点と使用する契約書について解説する。

補足案内

講演項目

1.全量買取法をめぐる最近の動き
(a)改正再エネ法の解説 過積載への規制
2.制度変更と対応方法
(a)出力増加及び基本仕様(メーカー、種類、変換効率)を変更しても買取価格への影響なし
(b)運転開始の3年しばり
(c)O&Mの基準強化、認定取消リスク
(d)出力抑制の時間単位制化と太陽光発電に関する指定電力会社指定(東北、北陸、中国、四国、九州、沖縄)
(e)滞留案件の連系承諾取得者の地位の失効
(f)送変電設備増強時における入札募集方式
3.完成した太陽光発電事業のセカンダリー取引リスクとデューディリジエンス
(a)3点セットの売却
(b)運転開始済発電所の売却
(c)許認可の移転可能性
(d) 土地のデューディリジエンス
(e)造成土地の崩壊リスク
(f)賃貸借契約、地上権設定契約、地役権
(g)パネルメーカーの倒産保険
4.セカンダリー取引の売買契約上の留意点
(a)株式譲渡と資産譲渡
(b)株式譲渡契約
(c)資産譲渡契約
(d)売買対価の支払い方法
(e)売買実行までの売主の義務
(f)売買実行前提条件
(g)契約相手方のクレジットリスク 
(h)売買代金のエスクロー
(i)設計ミス、建設ミス
(j)建設契約上の瑕疵担保責任
(k)O&M契約の発電効率保証
(l)パネル供給契約と性能保証
(m)情報開示と表明保証
5.トラブル事例の検証
(a)契約責任
(b)不法行為責任
(c)保険カバー
(d)過去の判例

講師紹介

江口 直明 (えぐち なおあき) 氏
 ベーカー&マッケンジー法律事務所の銀行・金融部門のリーダー、取扱太陽光案件:丸紅大分6号地82MW(プロジェクトファイナンス及びセカンダリーセールス)、ソフトバンク/三井物産米子43MW、同苫東111MW、レノバ富津40MW、住友商事愛媛西条23MW等のメガソーラ太陽光発電所(累計100件超、2,000MW超)の大規模案件、複数の2MW以下案件のバンドリング、TK-GKスキーム、屋根貸し案件、取扱風力案件:北海道幌延、北海道さらきとまない、北九州響灘、青森県六ヶ所村、愛媛県三崎町、秋田県八竜、石川県輪島(累計150MW超)、その他取扱環境エネルギープロジェクトファイナンス及びPFI案件:バイオエタノール・ジャパン関西(株)、吾妻木質バイオマス発電(13MW)、秋田県向浜木質バイオマス発電(20MW)、黒部市下水道バイオマスエネルギー利活用施設整備運営PFI、福岡クリーンエナジー廃棄物処理及び発電、福山RDF発電、東京臨海リサイクル発電、横浜市消化ガス発電PFI、埼玉県彩の国廃棄物、堺市資源循環型廃棄物処理施設PFI、その他廃棄物DBO案件多数、自家所有水力発電所や火力発電所の会社分割によるファンドへの売却と売電契約。福島IGCC最新鋭石炭火力(1,080MW)、福島相馬LNGガス火力(1,180MW)、横須賀パワーIPP(239MW)、東亜IPP(274MW)、ユニバーサルスタジオ・ジャパン向け(1250億円)等のプロジェクトファイナンス。1986年一橋大学法学部卒業、1988年東京弁護士会登録、1992年ロンドン大学(UCL)法学修士(国際ビジネス法)取得、1993年ベーカー&マッケンジーロンドン事務所勤務、内閣府PFI推進委員会専門委員(2010年~)、国土交通省空港運営のあり方に関する検討会委員(2011年)。
<主な論文>
 「被災地における太陽光発電PPPプロジェクト」(銀行法務21、2012年7月号)、「日本におけるプロジェクト・ファイナンスの立法課題」(ジュリスト1238号)、「アジアにおけるプロジェクトファイナンス」(OKAJI)他多数。